第57回【共通】午後 問題61-65

共通問題 午後

61 遺伝情報伝達について正しいのはどれか。
1. 染色体のDNA は三重鎖らせん構造をしている。
2. DNA からtRNA へ塩基配列が転写される。
3. リボソームRNAはスプライシングを受ける。
4. mRNA のつの塩基の組合せがアミノ酸を決定する。
5. ゲノム上のイントロンの遺伝情報が蛋白へ翻訳される。

答え

4
遺伝情報伝達について解説していきますね。
まず、遺伝情報はどこにあるか?というと、細胞の核の中にある染色体にあります。染色体はDNAという物質でできていて、DNAは二重らせん構造をしています。

DNAには、体を作るための設計図である遺伝子の情報が書き込まれています。この情報は、塩基と呼ばれる4種類の物質(A、T、G、C)の並び順によって表されています。

では、DNAの情報がどのようにして体に伝わるのか、順番に見ていきましょう。

  1. DNAからmRNAへ:DNAの遺伝情報は、まずmRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる物質にコピーされます。この過程を転写といいます。mRNAはDNAの情報をもとに作られる、いわば設計図のコピーのようなものです。
    https://bio-sta.jp/beginner/proteinsynthesis/
  2. mRNAからタンパク質へ:mRNAの情報は、細胞内のリボソームという場所で読み取られ、タンパク質が作られます。タンパク質は、体を作る材料となる重要な物質です。mRNAの塩基配列は3つずつに区切られ、それぞれの3つの塩基が1つのアミノ酸を指定します。アミノ酸が鎖のようにつながってタンパク質ができます。この過程を翻訳といいます。
    https://www.try-it.jp/chapters-10394/sections-10395/lessons-10425/
  3. イントロンとエクソン:遺伝子の中には、タンパク質の設計情報になる部分(エクソン)と、ならない部分(イントロン)があります。mRNAが作られる過程で、イントロンの部分は切り取られます。これをスプライシングといいます。
    https://ruo.mbl.co.jp/bio/product/epigenetics/article/gene-expression.html

これらのことから、正しい選択肢は4です。

その他の選択肢について

1. 染色体のDNA は二重らせん構造をしています。 2. DNA からmRNA へ塩基配列が転写されます。 3. mRNAはスプライシングを受けます。 5. ゲノム上のエクソンの遺伝情報が蛋白へ翻訳されます。

少し難しい単語も出てきましたが、理解できたでしょうか

62 深部腱反射について正しいのはどれか。
1. 感覚入力はⅢ群求心性線維を介する。
2. 運動出力はα 運動神経を介する。
3. 錘外筋線維が受容器となる。
4. 反射閾値は一定である。
5. 高齢者では亢進する。

答え

2
深部腱反射とは、筋肉が急に伸ばされた時に、その筋肉が反射的に収縮する反応のことです。例えば、膝の下をハンマーで軽く叩くと、足がポンと跳ね上がりますよね? これが膝蓋腱反射という深部腱反射です。

この反射は、体を守るための仕組みの一つで、転びそうになった時に瞬時に姿勢を立て直したり、バランスを保ったりするのに役立っています。

では、深部腱反射が起こる仕組みを詳しく見ていきましょう。

  1. 感覚の入力

筋肉が伸ばされると、筋肉の中にある筋紡錘というセンサーが感知します。筋紡錘は、筋肉の長さや変化を感じ取る役割をしています。この情報は、Ia群求心性線維という太い神経線維を介して、脊髄に伝えられます。

  1. 脊髄での処理

脊髄では、Ia群求心性線維からの情報が、α運動神経に伝わります。α運動神経は、筋肉を収縮させるための指令を出す神経です。

  1. 筋肉の収縮

α運動神経からの指令を受けて、筋肉が収縮します。これが深部腱反射による筋肉の動きです。

つまり、深部腱反射は、筋紡錘で感知→Ia群求心性線維で脊髄へ伝達→α運動神経で筋肉へ指令→筋肉が収縮、という流れで起こります。

選択肢について

5. 高齢者では亢進する。 これは正しくありません。高齢者では一般的に低下します。

1. 感覚入力はIa群求心性線維を介する。 これは正しいです。

2. 運動出力はα 運動神経を介する。 これは正しいです。

3. 錘内筋線維が受容器となる。 これは正しいです。筋紡錘の中に錘内筋線維があります。

4. 反射閾値は一定である。 これは正しくありません。年齢や健康状態などによって変化します。

63 自律神経の二重支配を受けるのはどれか。
1.汗腺
2. 膵臓
3. 脾臓
4. 立毛筋
5. 副腎髄質

答え

2
自律神経の二重支配について説明する前に、まず自律神経について簡単に説明しますね。

自律神経は、自分の意思とは関係なく働く神経で、呼吸、消化、血液循環、体温調節など、生命維持に必要な機能をコントロールしています。自律神経には、交感神経副交感神経の2種類があり、ほとんどの臓器はこれら2つの神経によって二重に支配されています。

交感神経は、活動している時や緊張している時に優位に働き、心拍数を上げたり、血圧を上げたり、呼吸を速めたりします。いわば「戦うか逃げるか」の神経です。

一方、副交感神経は、リラックスしている時や睡眠時に優位に働き、心拍数を下げたり、消化活動を促進したりします。いわば「休息と消化」の神経です。

ほとんどの臓器は、この交感神経と副交感神経の二重支配を受けて、状況に応じてバランスよく機能しています。

では、選択肢を見ていきましょう。

  1. 汗腺: 汗腺は交感神経のみの支配を受けます。
  2. 膵臓: 膵臓は交感神経と副交感神経の二重支配を受けます。
  3. 脾臓: 脾臓は交感神経のみの支配を受けます。
  4. 立毛筋: 立毛筋は交感神経のみの支配を受けます。
  5. 副腎髄質: 副腎髄質は交感神経のみの支配を受けます。

よって、自律神経の二重支配を受けるのは2. 膵臓です。

膵臓は、消化液を分泌する外分泌腺と、ホルモンを分泌する内分泌腺の両方を持つ臓器です。交感神経は消化液の分泌を抑制し、副交感神経は消化液の分泌を促進することで、消化活動を調節しています。

64 酸塩基平衡で正しいのはどれか。
1. 正常の動脈血のpH は6.4 である。
2. 嘔吐では代謝性アシドーシスになる。
3. 過換気では呼吸性アルカローシスになる。
4. 呼吸性アルカローシスでは尿は酸性になる。
5. 代謝性アルカローシスではKussmaul 呼吸がみられる。

答え

3
酸塩基平衡とは、体内のpH(水素イオン濃度)を一定に保つための仕組みのことです。pHは、酸性・アルカリ性の度合いを示す数値で、7が中性、それより小さいと酸性、大きいとアルカリ性になります。

人間の体のpHは、7.35~7.45の弱アルカリ性に保たれており、この範囲から外れると、様々な体の不調が起こります。酸塩基平衡を維持するために、体には様々な調節機構が備わっています。

では、選択肢を一つずつ見ていきましょう。

  1. 正常の動脈血のpHは6.4である。 → これは誤りです。正常の動脈血pHは7.35~7.45です。6.4では酸性度が高すぎて、生命に関わります。
  2. 嘔吐では代謝性アシドーシスになる。 → これは誤りです。嘔吐では胃酸が失われるため、代謝性アルカローシスになります。アシドーシスは酸性、アルカローシスはアルカリ性になることです。代謝性とは、呼吸以外の原因でpHが変化することです。
  3. 過換気では呼吸性アルカローシスになる。 → これは正しいです。過換気とは、呼吸が速く深くなることで、二酸化炭素(CO2)を過剰に排出してしまう状態です。CO2は体内で酸性を示すため、CO2が減るとアルカリ性に傾きます。呼吸性とは、呼吸によってpHが変化することです。
  4. 呼吸性アルカローシスでは尿は酸性になる。 → これは誤りです。呼吸性アルカローシスでは、体はアルカリ性に傾いているため、尿をアルカリ性にしてpHを調整しようとします。そのため、尿はアルカリ性になります。
  5. 代謝性アルカローシスではKussmaul呼吸がみられる。 → これは誤りです。Kussmaul呼吸は、深い呼吸が速く続く呼吸で、代謝性アシドーシスで見られます。代謝性アシドーシスでは、血液が酸性に傾くため、呼吸を速く深くすることでCO2を排出し、pHを調整しようとします。

酸塩基平衡は、体の機能を正常に保つために非常に重要です。pHの変化によって、神経系、呼吸器系、循環器系など、様々な臓器に影響が出ることがあります。


65 唾液分泌について正しいのはどれか。
1. 1日の分泌量は約100 mLである。
2. 分泌速度が増すとpHは低下する。
3. 加齢により分泌量は増加する。
4. 唾液分泌中枢は中脳にある。
5. 糖質を分解する。

答え

5
唾液は、主に耳下腺、顎下腺、舌下腺という3つの大きな唾液腺から分泌される液体です。1日に約1~1.5リットルも分泌されます。

唾液には、以下のような様々な役割があります。

  • 消化作用: アミラーゼという酵素がデンプンを分解し、消化を助けます。
  • 抗菌作用: リゾチームなどの成分が細菌の繁殖を抑え、虫歯や歯周病を予防します。
  • 粘膜保護作用: ムチンという成分が口腔内の粘膜を保護し、乾燥や傷を防ぎます。
  • 洗浄作用: 食べかすや細菌を洗い流し、口の中を清潔に保ちます。
  • 再石灰化作用: カルシウムやリン酸などの成分が、歯のエナメル質を修復し、虫歯を予防します。

では、選択肢を一つずつ見ていきましょう。

  1. 1日の分泌量は約100mLである。 → これは誤りです。1日の分泌量は約1~1.5リットルです。
  2. 分泌速度が増すとpHは低下する。 → これは誤りです。分泌速度が増すとpHは上昇します。唾液は重炭酸イオンなどの緩衝作用を持つ物質を含んでおり、分泌速度が上がることでこれらの物質の濃度が高まり、pHがアルカリ性に傾きます。
  3. 加齢により分泌量は増加する。 → これは誤りです。加齢により分泌量は減少します。高齢になると、唾液腺の機能が低下し、唾液の分泌量が減少しがちです。そのため、口腔乾燥や虫歯、歯周病のリスクが高まります。
  4. 唾液分泌中枢は中脳にある。 → これは誤りです。唾液分泌中枢は延髄にあります。延髄は脳幹の一部で、呼吸や循環など、生命維持に重要な機能をコントロールしています。
  5. 糖質を分解する。 → これは正しいです。唾液に含まれるアミラーゼという酵素が、デンプンなどの糖質を分解します。

正しい選択肢は 5. 糖質を分解する。 です。

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