第57回【共通】午前 問題86-90

共通問題 午前

86 FIMについて正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 見当識を評価する。
2. 社会的交流を評価する。
3. 見守りが必要な場合は4点と判定する。
4. 更衣は上半身と下半身を分けて評価する。
5. 杖を使用して歩行が自立すれば完全自立と判定する。

答え

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機能的自立度評価法(functional independence measure:FIM)とは、1983年に提唱されたADL(身の回りの必要最低限な活動)の評価方法の一つです。主に介助の必要度合いに着目した評価を簡便に行うことができ、介護負担度の判断が可能な点が特徴とされています。また、現在できる動作や認知機能の評価のみで判定するため、医学的な知識がなくても容易に評価できるところも特徴といえます。

1.見当識の評価はありません。
2.〇
3.見守り(監視)が必要な場合は4点と判定する。→5点と判断する
4.〇
5.歩行は杖の使用有無で区別せず、自立度合いで評価されます。

87 アキレス腱断裂について正しいのはどれか。
1. つま先立ちは可能である。
2. 受傷好発年齢は10歳代である。
3. 高齢者では日常活動での受傷が多い。
4. 術直後から患側の足関節可動域訓練を行う。
5. ステロイド注射はアキレス腱断裂を予防する。

答え



アキレス腱断裂は中高年に多く、スポーツ活動中よりも日常生活での受傷が多くを占めます。加齢に伴いアキレス腱が脆弱化することが主な要因とされています。

1.× つま先立ちは不可能である。アキレス腱が断裂すると、足関節の底屈(つま先を下げる動き)ができなくなります。
2.× 受傷好発年齢は30-50歳代である。
3.〇
4.× 術後はしばらく完全免荷が必要で、術直後からの足関節可動域訓練は行われません。
5.× ステロイド注射はかえってアキレス腱を脆弱化させ、断裂のリスクを高める可能性があります。

ステロイド薬がアキレス腱を脆弱化させる理由は主に以下の2点があげられます。

①腱細胞への影響 ステロイド薬は腱細胞の代謝を抑制し、コラーゲン合成を阻害します。コラーゲンは腱の主要構成タンパク質で、これが減少すると腱の強度が低下します。また、腱細胞の老化や細胞死を促進するため、腱の修復能力が低下します。
②血行不良の影響 ステロイド薬は血管収縮作用があり、腱部位の血行を悪化させます。腱は元々血行が乏しい組織なので、更なる血流低下により腱内部の低酸素状態が生じ、腱細胞の代謝が阻害されます。これにより腱の修復が滞り、脆弱化が進行します。
つまり、ステロイド薬は腱細胞の新陳代謝を阻害し、腱の強度を低下させると同時に、血流障害により腱の修復能力も低下させるため、腱組織が脆弱になり、断裂のリスクが高まるのです。特に中高年で腱の代謝が低下している場合には、この影響が顕著になります。

そのため、ステロイド薬の局所注射は腱断裂の危険因子と考えられており、腱周囲への使用は控えるべきだとされています。

88 骨形成不全症で正しいのはどれか。
1. 遺伝性疾患ではない。
2. 聴覚障害を合併する。
3. 四肢・体幹の変形は少ない。
4. 骨折の頻度は小児期より思春期で高い。
5. 出生1,000人あたり1〜2人の割合である。

答え


骨形成不全症は、先天性の遺伝性疾患で、骨の脆弱性が特徴的な疾患です。主な症状は以下の通りです。
○骨折しやすい
 骨が極端に脆く、軽度の外力でも骨折を起こしやすいのが特徴です。特に出生時や乳児期から多数の骨折が起こります。

○低身長
 骨の石灰化不全により、思春期以降の成長が阻害されるため低身長になります。

○変形
 骨折の治癒過程で変形が生じ、四肢や体幹の変形(くの字脚、側弯症など)を伴います。

○青く透ける皮膚
 皮膚が非常に薄く、血管が透けて見えるため、皮膚が青白く透ける様子があります。

○聴力障害
 内耳の石灰化不全により、感音難聴を合併することが多くあります。

原因は第1型コラーゲン遺伝子の異常により、コラーゲンの量的・質的な異常が生じることにあります。重症度は様々で、最重症型では周産期に死亡する場合もあります。治療は対症療法が中心となります。

1.× 遺伝性疾患ではない。 → 不正解 骨形成不全症は遺伝性の疾患です。
2.〇 聴覚障害を合併する。→ 正解 骨形成不全症では聴覚障害を合併することが多くあります。
3.× 四肢・体幹の変形は少ない。→ 不正解 骨形成不全症では四肢や体幹の変形が特徴的です。
4.× 骨折の頻度は小児期より思春期で高い。→ 不正解 骨折は小児期に最も多く見られます。
5.× 骨形成不全症の発生頻度は約2~3万人に1人

89 原発性骨粗鬆症について正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 男性に多い。
2. 海綿骨の減少を伴う。
3. 喫煙は危険因子である。
4. 低カルシウム血症を伴う。
5. 骨折好発部位は尺骨である。

答え

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原発性骨粗鬆症は、加齢や性ホルモン欠乏などを原因とする骨量の減少と骨組織の微細構造の破壊を特徴とする疾患です。

主な特徴は以下の通りです。

・骨密度が低下し、骨がもろくなる
・軽微な外力でも骨折しやすくなる(骨折好発部位は腰椎、大腿骨近位部など)
・原因は不明だが、加齢、エストロゲン欠乏(閉経)、カルシウム・ビタミンD不足、運動不足などが危険因子
・初期は無症状で進行する
・骨密度検査で骨量減少を評価する

骨は常に新陳代謝を繰り返しており、若年期にピークを迎えた後、徐々に骨量が減少していきます。加齢や閉経後のホルモン変化により、骨吸収が骨形成を上回ると骨量減少が進行し、骨粗鬆症に至ります。

発症すると日常生活で骨折しやすくなり、腰痛など症状が出現し、寝たきりなどの要介護状態に陥るリスクもあるため、予防と早期発見が重要視されています。

原発性骨粗鬆症について正しい選択肢は、2と3です。

1.× 原発性骨粗鬆症は女性に多い疾患です。閉経後のエストロゲン欠乏が主な原因とされています。
2.〇 海綿骨の減少を伴う 原発性骨粗鬆症は、骨量の減少により海綿骨が減少し、骨がもろくなる病態です。

3.〇 喫煙は危険因子である。喫煙は骨代謝に悪影響を及ぼし、原発性骨粗鬆症のリスクを高めます。
4.× 原発性骨粗鬆症自体は低カルシウム血症を伴いません。
5.× 骨折の好発部位は腰椎、大腿骨近位部などです。尺骨骨折はまれです。

90 脳梗塞の発生部位と出現する症状の組合せで正しいのはどれか。
1. Broca領域     遂行機能障害
2. 右小脳半球    左上下肢の運動失調
3. 右内包後脚    左上下肢の運動麻痺
4. 左前頭葉     左半側空間無視
5. 左放線冠     感覚性失語

答え

1.× Broca領域 – 運動性失語
2.× 右小脳半球 – 左側の運動失調
3.〇 右内包後脚 – 左上下肢の運動麻痺
内包は大脳皮質から延髄へ向かう運動路の主要な経路です。右内包後脚の梗塞は左半身の運動麻痺(左片麻痺)を引き起こします。
4.× 左前頭葉 – 遂行機能障害が起こる可能性があります
5.× 左放線冠 – 感覚失語ではなく、運動性失語が起こります
脳梗塞の症状は、梗塞部位によって異なります。内包後脚の梗塞は対側の上下肢の運動麻痺を典型的に引き起こすため、選択肢3が正解となります。

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