第57回【共通】午前 問題91-95

共通問題 午前

問題91  筋電図検査について正しいのはどれか。
1. 針筋電図の神経原性変化では低振幅・短持続電位波形が出現する。
2. 軸索変性がある場合、活動電位の振幅は低下しない。
3. 脱髄病変では神経伝導速度が低下する。
4. 感覚神経の伝導速度は測定できない。
5. 筋疾患では神経伝導速度が低下する。

答え


1.× 神経原性変化では、針筋電図所見として以下のような特徴があります。
運動単位活動電位が大きい(高振幅)
持続時間が長い(長持続)
多相性を示す。
神経原性変化:神経が障害されるため、筋を動かすための信号が正常に送れなくなる。
そのため、神経は筋を動かすために、より大きな信号を送る必要がある。
これが針筋電図で見られる「大振幅、長持続、多相性」の波形として現れる



2.× 軸索が変性すると、神経細胞の中をうまく流れていた電気信号が流れにくくなります。
電気信号が流れにくくなると、筋に十分な信号が届かなくなります。
筋に十分な信号が届かないと、筋肉の活動が弱くなります。
筋の活動が弱くなると、その筋の活動電位の振幅が小さくなってしまうのです。
つまり、軸索の変性により、神経信号の伝達が悪くなり、結果として筋肉の活動電位の振幅が小さくなってしまうのです。このように、軸索の病変が原因で、筋の活動電位の振幅が低下するのが、軸索変性の特徴なのです。

3.〇
4.× 感覚神経の伝導速度は測定できる
5.× 筋疾患とは、筋肉自体に問題がある病気のことです。例えば筋ジストロフィーなどがこれに当てはまります。
筋疾患では、以下のような理由から、神経伝導速度が正常に保たれます。
●神経自体に問題はない
筋疾患では、神経自体に障害がありません。神経の構造や機能は正常です。
●神経伝導に問題がない
神経信号が正常に筋まで伝わることができます。神経の伝導速度は正常です。
つまり、筋疾患では神経自体に問題がなく、神経信号の伝導も正常なため、神経伝導速度は正常範囲内を示すのです。筋だけに障害があるため、神経伝導速度には影響がないということがわかります。


問題92  食道癌について正しいのはどれか。
1. 女性に多い。
2. 腺癌が90 %を占める。
3. リンパ行性転移は稀である。
4. 飲酒・喫煙は発症に関与する。
5. 中部食道よりも下部食道の発症率が高い。

答え

1.× 男性の方が多い。食道がんは、日本人の場合、飲酒と喫煙が大きな原因であることがわかっています。
引用:NHK 健康ch:食道がんの原因とは?飲酒・喫煙・辛いものなど生活習慣がリスクに

2.×食道がんの90%以上が扁平上皮癌です。理由は食道は、ほぼ扁平上皮細胞だからです。

3.×食道がんは、リンパ節転移を起こしやすいのが特徴です。
食道壁内のリンパ管にがん細胞が入ると、食道周囲のリンパ節にがんが転移します。食道はリンパ系が発達した臓器であるため、比較的早期の段階から頸部・胸部・腹部の広い範囲のリンパ節にがんが転移することが多い。
4.〇
5.× 日本人の食道がんでは、食道の中央付近(胸部中部食道)に発症するケースが約半数、次いで胸部下部食道、胸部上部食道の順に多く、食道胃接合と頸部食道にも発生します。
引用:国立がん研究センター https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/esophageal/001/index.html

問題93  感染性心内膜炎が原因で生じやすいのはどれか。
1. 脳塞栓症
2. 心囊液貯留
3. 下肢静脈血栓
4. 僧帽弁狭窄症
5. 循環血漿量減少性ショック

答え


1.〇 感染性心内膜炎は、心臓の内側の膜、つまり心内膜という部分に細菌などの病原体が感染してしまう病気です。
感染性心内膜炎患者は、以前から何らかの心臓の病気を抱えています。例えば、弁膜症や先天性心疾患など、弁に異常がある場合に感染しやすくなります。 この既存の弁の病変部位が、細菌の付着や増殖のための良好な環境となるのです。弁が感染し傷つくと、血流が乱れたり、血栓ができたりするので脳塞栓症を合併しやすくなります。

2.× 心囊液貯留とは、心臓の周りに正常以上の液体がたまる病態のことです。

3.× 下肢静脈血栓とは、下肢の静脈内に血栓(血の塊)ができてしまう病気です。原因 長期臥床、妊娠、高齢、肥満、悪性腫瘍、下肢の外傷などが主な原因となります。

4.× 僧帽弁狭窄症とは、心臓の中にある僧帽弁が狭くなる病気です。主な原因は先天性の奇形や、リウマチ性心疾患による弁の変形・硬化です。

5.× 循環血漿量減少性ショックとは、体内の血液量が極端に減少することで引き起こされる重篤な病態です。原因 大出血、脱水、重症感染症などによる体液・血液の大量喪失が主な原因となります。

問題94  心房細動に対する治療として誤っているのはどれか。
1. β 遮断薬
2. 抗凝固薬
3. 電気的除細動
4. アブレーション
5. ニトログリセリン

答え


1.〇 β遮断薬 – 心拍数を減らし、心房細動を管理するために使用されます。適切な治療法の1つです。
2.〇 抗凝固薬 – 血栓予防のために使用されます。心房細動では血栓リスクが高いため、重要な治療法の1つです。

3.〇 電気的除細動 – 電気ショックにより正常な洞調律に復帰させる治療法です。

4.〇 アブレーション – 心房細動の原因となる異常な心筋部位を焼灼することで、洞調律を復帰させる治療法です。焼灼(しょうしゃく)とは、異常な心筋組織を熱や冷却によって破壊することを指します。
5.× ニトログリセリンは主に狭心症の治療に使用される薬剤で、心房細動の治療には適していません。

問題95  がんについて正しいのはどれか。
1. 環境は発生要因である。
2. 緩和ケアは術後に開始する。
3. 年齢調整死亡率は上昇している。
4. 一つのがん抑制遺伝子により発症する。
5. 我が国のがん死亡数は胃癌が最も多い。

答え


1.〇 環境要因はがんの発生に大きな影響を及ぼすことが知られています。遺伝的要因に加えて、喫煙、食生活、化学物質への暴露など、様々な環境要因ががんの発症に関与していると考えられています。

2.× 緩和ケアは、がんの診断時から提供される必要があり、治療開始と同時に開始することが推奨されています。

3.× 我が国のがん年齢調整死亡率は、長期的に低下傾向にあります。がん対策の効果が表れてきていると評価できます。
年齢調整死亡率は、人口の年齢構成の違いを考慮に入れた死亡率のことです。例えば、高齢者が多い地域と若年者が多い地域を比較する場合、単純に死亡率を比較すると、高齢者が多い地域の方が死亡率が高くなります。これは、単に高齢者の割合が多いためだけかもしれません。そこで、年齢構成が同じ基準人口を使って死亡率を計算すれば、その地域の「実際の」死亡率を把握できます。これが年齢調整死亡率です。高齢化などの人口構造の変化の影響を排除できるため、長期的な死亡率の変化を正確に捉えられるのが特徴です。特に、がんなど年齢に依存した疾病の動向分析に有用です。つまり、年齢調整死亡率は、母集団の年齢構成の影響を取り除いた上で、より正確な死亡率を示す指標なのです。

4.× がんの発症には複数の遺伝子変異が関与しており、単一の遺伝子変異だけではがんは発症しません。

5.× 我が国のがん死亡数は、肺がんが最も多く、次いで大腸がん、胃がん、肝がん、膵がんの順となっています。胃がんは以前は最多でしたが、近年は減少傾向にあります


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